はーい静かに。じゃ、俺が岩と縄を見て思ったことを話します。


はーい静かに。じゃ、俺が岩と縄を見て思ったことを話します。
参照元http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1324382017/

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 20:53:37.48 ID:h1gSPVa60
その家にあるのは、そりゃもうでっかい岩なんだけど、
たぶん元々は、岩が最初にあって、
それを囲うように家ができたんだと思う。

岩は縄でぐるぐる巻きにされてて、
その縄が岩のどこから生えてるのか分かんないけど、
とにかく縄は女の子と繋がってる。

斧でも鋸でも、縄を切ることは誰にもできなくて、
だから女の子は、岩から数メートルの範囲でしか動けない。
そういうわけで、そこに家を建てざるを得なかったんだと思う。





4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 20:55:18.51 ID:h1gSPVa60
女の子は背中から縄が生えていて、
そのまま服を着ると擦れてかゆいから、
女の子の服はどれも、首元から背中にかけて切りぬいてある。

寝るときはうつ伏せ。
ロープは常にたるませて左手で持って、
なんとなく右手で弄ってる。

宝物は父親が買ってきてくれた望遠鏡で、
本を読むのに飽きて暇になると、それを使って外を見る。
見えるのは雪か木かくらいのものなんだけど、一生懸命見る。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 20:59:51.96 ID:h1gSPVa60
外に出る機会がないから、
女の子は結構世間知らずなんだけど、
本人はそれを気にして、本をたくさん読む。

女の子は家事も手伝うし、気がきくし、
変な縄が背中から生えてても文句言わないし、
なんだかんだ家族はその暮らしを気に入ってる。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:02:40.27 ID:h1gSPVa60
猛吹雪の日、
女の子がいつも通り望遠鏡をのぞいていると、
なにか動くものを発見する。
雪道で数歩ごとに転ぶそれは、たぶん人間。

とっても辛そうだったから、
女の子はどうにかしてあげようと思うが、
縄のせいで家から出ることはできず、
両親を待つことしかできない。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:04:21.90 ID:h1gSPVa60
縄はぎりぎりで家から出られないような長さで、
言いかえるとそれは、家を建てた人が、
ぎりぎりで出られない大きさの家にしたってこと。

どうせちょっとしか外に出られないくらいなら、
出られない方がマシだって、
両親は考えたんじゃないかな。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:07:26.10 ID:h1gSPVa60
女の子は開けた窓から、
待っててね、そこの人、と叫ぶ。
声が届いているかは分からないが、
両親が帰ってくるまで、何度も叫ぶ。
人に話しかけるのはたのしい。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:10:19.34 ID:h1gSPVa60
女の子の父親の肩を借りて、
そいつは家に連れ込まれる。
凍えてはいるが、大丈夫らしい。

防寒具を脱がしてみると、
彼が女の子と同じくらいの歳であることが分かる。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:14:12.92 ID:h1gSPVa60
助かりました、と男の子は言う。
女の子の母親があったかいスープを持ってくる。
震える手で皿を受け取り、お礼を言う。

男の子はなにかの病気らしく、
母親は女の子に離れるよう促すが、
女の子は母親の意図に気付かないふりをする。

同じくらいの歳の子を見るのは、
初めてと言っていいくらいだったから。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:17:59.89 ID:h1gSPVa60
別に伝染りゃあしません、と男の子は言う。
その病名は女の子の父親も知っていた。

たしかに男の子の言うことは本当だ。
死ぬほど弱ってなければ、まずうつらない病気だ。
うつったら、もう治んないんだけど。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:24:14.71 ID:h1gSPVa60
男の子があらためて父親にお礼を言うと、
いや、あの子が気付いたから俺は助けにいけたんだ、
礼ならあの子に言いな、と父親は女の子を指差す。

女の子は縄をいつも以上に弄り回しながら、
お父さんがいかなきゃ、私にはどうしようもなかったよ、と言って笑う。
礼ならお父さんに言って。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:29:38.49 ID:h1gSPVa60
いい家族だなあ。

男の子は岩を見る。
どうしてこんなものが家の中にあるんだろう?

岩から伸びる縄を見る。
どうしてこんなものが巻いてあるんだろう?

縄の先の女の子を見る。
視線は女の子の背中にうつる。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:32:57.12 ID:h1gSPVa60
大きく開いた首元から見える、白くてきれいな背中。
男の子は慌てて目をそらす。顔が熱くなる。

こんなにかわいい子なら縄も必要かもな、と男の子は思う。
いやいや、そんなことはない。

でも大体わかった。
この縄はべつに悪いものじゃない。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:37:12.51 ID:h1gSPVa60
女の子の母親が縄について説明してくれる。
母親は、この縄について話すのが好きらしい。
先生が、この岩を神様だと言っていたからなんだろう。

岩はこの辺りの守り神のようなもので、
少女は神に選ばれたんだとかなんとか。
うさんくせえなあ。


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:43:31.87 ID:h1gSPVa60
男の子が母親と話していると、
いつのまにか縄が鼻の先にある。
縄が揺れて鼻先をくすぐる。

縄の先を見ると、女の子がいたずらっぽく笑っている。
なんだか楽しくてしかたがなさそうだ。
ほんとにありがとな、と男の子が言うと、
しつこい! と女の子は照れた様子で言う。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:49:28.31 ID:h1gSPVa60
スープを飲み終えると、
男の子は女の子に言う。

外に出たい?

女の子は何度もうなずく。

出たいなあ。

お互い、本当はこんなこと、
言っちゃいけなかったんだろうけどな。


25 :くそう想像以上に長くなりそうだぜ 2011/12/20(火) 21:54:33.49 ID:h1gSPVa60
男の子は椅子からふらふらと立ち上がると、
女の子のところまで歩いていく。
転ぶ。女の子がかけよる。

起き上がった男の子が、
女の子の背中に手を伸ばし、
女の子は体を固めて、なに? とたずねる。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:57:55.19 ID:h1gSPVa60
男の子が縄をつかむと、
縄は力を失ったように柔らかくなる。
女の子が縄をひっぱってみると、するする伸びる。

これが限界なんです、と男の子は両親に言う。
切ることはできませんが、伸ばすことはできます。
そして女の子の方を向いて、たずねる。

外に出たい?


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 21:59:47.30 ID:h1gSPVa60
女の子は何度も何度もうなずく。
母親が止めようとするのを、父親が止める。

男の子は縄をつかんだまま、ドアを開けて外に出る。
女の子の足が外に踏み出す。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:01:57.95 ID:h1gSPVa60
背中が大きく開いた服を着ている女の子は、
本当なら二秒もそこにいられないはずなのに、
腰の高さまで雪の積もった山の中を、ぐいぐい進んでいく。

こんな機会、二度とないかもしれない、と思ったんだろうな


31 :小休憩 2011/12/20(火) 22:05:09.57 ID:h1gSPVa60
女の子は木のひとつを見上げると、幹に手を当てる。
ごつごつしてる、と女の子は言う。
そのとき、枝が雪の重みに耐えきれなくなり、
大量の雪を女の子の頭上に落とす。

つめたい! と女の子は慌てて木の下から出てきて、
雪を払ってあげようと駆けだした男の子と衝突する。


35 :再開 2011/12/20(火) 22:28:13.22 ID:h1gSPVa60
男の子の手から縄が離れる、
とたんに、縄が元に戻り出す。
男の子は慌てて女の子を追う。

縄に引っ張られた女の子は木にぶつかり、
縄は枝にひっかかって停まる。


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:30:57.98 ID:h1gSPVa60
女の子は額からわずかに血を流しながら、
自分のぶつかった木を見上げている。

男の子は気が気じゃない。
悪かった、大丈夫? と男の子がきくと、
女の子はすごく嬉しそうな顔で、怪我した! と答える。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:35:07.23 ID:h1gSPVa60
「まるで本の中の話だよ」

「なにが?」

「木とぶつかって怪我すること」

「いや、本が現実みたいなんだよ。
 現実に木にぶつかった人がいたから、
 本に書かれるようになったんだ。現実が先」

「まあね。でも私にとっては本の中だ」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:42:37.68 ID:h1gSPVa60
手当のために、二人は家に戻る。
両親は女の子の額の傷を見て慌てふためくが、
女の子は手当の最中も、笑顔を絶やさない。
男の子と目が合うと、こくこく頭をさげる。

息を切らしながら、やべーな、と男の子は思う。
一時間やそこらで骨抜きにされちゃったわけだから。


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:43:49.87 ID:h1gSPVa60
手当が済んだ女の子は、
ひっぱって、ひっぱって、と言う。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:50:15.76 ID:h1gSPVa60
それから二人は定期的に、
一緒に散歩に出かけるようになる。

両親としては、難病持ち、かつ、
魔法使いの男の子と出歩かせるなんて、
心配で心配で仕方なかったけど、
それまで不自由な思いをさせてきた分、
楽しそうな娘を見ると、なんとも言えなかった。

そういう風に笑えるんだなあ、うちの子は。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:54:17.90 ID:h1gSPVa60
「あれはなに?」

「あれはキツネだ」

「私たち、どこまでいけるのかなあ?」

「わからない。君次第だし、僕次第でもある」

「ねえ、他にはどんな不思議なことができるの?」

「縄を伸ばしてる間は、他になにもできないよ」

「じゃあ、縄を伸ばすのは難しいことなの?」

「僕以外にはできないんじゃないかな」と男の子は答える。

というか、僕以外にはできてほしくないなあ。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 22:59:49.76 ID:h1gSPVa60
「あ、キツネだよ」

「あれは人だよ」

「そっか。あれは人か」

「やっぱり森から出るのは難しそうだな」

「そうだね。街まで歩くのは無理かなあ」

「まあ何にせよ、僕は街に行けないんだけど」

「なんで?」

「街の人に嫌われてるから」

「ふーん。縄つけてる人は街に入れるのかな?」

「分からない」たぶん無理だ。


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:07:01.91 ID:h1gSPVa60
「やっぱり魔法使いは街に入れないの?」

「魔法使いねえ。誰が言ったんだい?」

「だって、こんなことできる人、他にいるかな?」

「いや、確かに魔法使いなんだろうさ。
 ただね、魔法使いは街に入れないんじゃなくて、
 街に入れない奴が、魔法使いになるんだ、たぶん」

「でも私、魔法使えないよ?」

「じゃあ街に入れるんだろう」

「やった!」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:13:54.10 ID:h1gSPVa60
「また転んだ。だいじょうぶ?」

「転ぶだけだよ。大したことない」

「どういう病気なの?」

「たまに、何も感じなくなるだけ」
その頻度は、どんどん増すんだけど。

「ふうん。はい」

「はい?」

「そんときは、私がひっぱって、支えるから」

「ええと……ありがとう」

「あ、そうだ、それ。私もありがとうだ」


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:20:40.98 ID:h1gSPVa60
「あーあ、あなたともっと早く知り合えてたらなあ」

「もっと早く外に出られたのにな」

「それもあるけどさ」

「他にあるのか」

「こんなに歳が近い人と仲良くなるの、初めてだから」

「僕もだよ」というか、人と仲良くなるの、初めてだから。

「ていうか、縄がなかったらなあ」

でもそしたら知り合えていないかもしれない。
縄があって良かった、と男の子は思った。女の子には悪いけどさ。


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:24:18.06 ID:h1gSPVa60
なんにも知らない女の子はなんにでも感動する。
ろくに見る物のない冬の森の中で、
木々に、雪に、枝の合間から見える星に、いちいち喜ぶ。
そこにあるのは見たことのないものでもないんだけど。

木は、下から見たことがないから、楽しいんだそうだ。
よくわからん。
雪は、たくさんあるから、嬉しいんだそうだ。
それはちょっとわかる。


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:28:42.20 ID:h1gSPVa60
「あのね、こうやって歩きながら上を見ると、
 枝が動いて、星がちかちかして、すごいの」

「ああ。すごいな」

「でも街の明かりでやるともっとすごいなあ。
 あっち、いけないのかなあ」

「春になって、雪がとけたら、行けるかもしれない」

「早くそうならないかなあ」

「そうなるといいな」


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:32:39.07 ID:h1gSPVa60
「これからあの人がうちを訪ねてきても、追い払ってちょうだい」

これも娘を思う気持ちから出てきた言葉だった。


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:36:35.02 ID:h1gSPVa60
いつものように女の子の家を訪れた男の子は、
「残念だが今日は会わせられない」と父親に言われる。
次もその次も、同じことを言われる。

「なにかあったんですか?」
「娘は病気になったんだ」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:43:07.88 ID:h1gSPVa60
帰り道に男の子は考えた。
どうしてあの子に会わせてくれないんだろう?
病気になった、と父親は言っていた。

病気か、と男の子は思った。僕の病気。
死にかけていなければ、まずうつることはない。

でもあの子はどうなんだろう?
あの子を普通の人と同じように考えたらいけないんじゃないか?


63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:47:51.37 ID:h1gSPVa60
そして両親があの子を僕に会わせたがらないのは、
あの子が既に僕の病気に侵されていて、
それをそうと僕に気づかせないために、
ひょっとしたら女の子自身の希望で、
僕と会わないようにしてるんじゃないか?


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:50:09.22 ID:h1gSPVa60
さてさて。信心深い母親のことを思い出そう。
彼女は以前から岩のことを神様扱いしていた。

というのもだ、女の子が生まれてしばらくして、
親が目を離したすきに、縄と繋がっちゃったとき。
あまりに不可解なできごとに、街の人たちは、
女の子を不吉な子供として処分しようとしたんだ。


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:53:31.25 ID:h1gSPVa60
そこに現れたのが先生、まあつまり宗教家だ、
そいつが例のうさんくさい話をでっちあげてくれたおかげで、
女の子は見逃された。守り神がどうのこうの。
両親は喜んだ。女の子は助かったのだ。


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/20(火) 23:57:45.77 ID:h1gSPVa60
宗教家さんが本当にそう考えていたのかは知らない。
でも女の子の母親は、ちょっとマジに受け取ってしまった。

それでよーく考えたら、その守り神たる岩と娘を結びつける縄を、
得体のしれない魔法で本来以上に伸ばしたりする行為は、
あれちょっとこれ冒涜なんじゃない? と言えそうだった。

おりよく、男の子の噂が父親の耳に入った。
街を追い出された、得体のしれない術を使う男の話。
これ以上あの男と娘を会わせるべきではない。


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:00:32.28 ID:TE6x0u8e0
男の子は考えた。
この病気で生きていられるのは僕だからだ、
あの子が同じ病気になったら、もう長くはないだろう。

そうならないように、
ものすごーく気を付けたつもりだったんだけどな。
ものすごーく。

僕のしたことは、彼女の静かな日々を、
しあわせな家庭をぶち壊すことでしかなかったんだ。

男の子は女の子の家に通うことをやめた。
病気は進行し始めた。


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:04:39.05 ID:TE6x0u8e0
いつもどおり望遠鏡で外を見ていれば、
何度も通ってきていた彼を見つけるのは
簡単なことだったんだけど、
「彼はもう迎えに来ない」と聞いたショックで、
女の子は外に対する興味をなくしていた。

「もうあの男の子はやってこないよ。
 病気がひどくなって、ここまで来れないらしいわ」

確かに男の子の病気は酷くなり、ここまで来れなくなった。この嘘の少し後に。


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:09:16.42 ID:TE6x0u8e0
女の子は考えた。
お母さんたちは嘘をついてるんじゃないかなあ。

男の子は、私に対して興味をうしなったか、
そうじゃなきゃ、私のことが嫌いになったんだ。
なにか悪いことしたかなあ。
なにか間違ったこと言ったかなあ。

いや、実は、私の縄をどうにかするために、
あの人はすごい対価を支払っていのかもしれない。
それで病気がひどくなっちゃったとか。

どれにしても、嫌な話だね。


71 :>>1です 2011/12/21(水) 00:09:19.49 ID:a1lMHs4qO
携帯から>>1です

眠くなったので布団の中からゆっくり投下します

最後二人は死にます


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:09:49.23 ID:Fw4sZ/gI0
いうなよ














いうなよ


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:12:11.10 ID:TE6x0u8e0
女の子は、直接会って確かめたかった。
でも、いつも以上に両親の気遣いが感じられて、
なんとかして彼女の気を逸らそうとしているのを見ると、
これ以上男の子について何か言ったり考えたりすることは、
両親の好意に背くことであるように思えた。

だから女の子は、男の子について追及するのはやめ、
前みたいにふるまうようにした。

縄はどうしても短く感じられたが。


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:17:04.29 ID:TE6x0u8e0
男の子はたまに目が覚めると、
枕元の縄をさわって、また眠った。
なんでもないただの縄を。


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:22:33.50 ID:TE6x0u8e0
母が開けた窓から吹雪が入り込み、
女の子の首筋を雪が冷やしたとき、
彼女は、この縄、切り落とせないかな、と思った。

両親が仕事や買い物に出ている隙を見て、
女の子は縄を切る努力をするようになる。
手は肉刺だらけになり、母親はそれを見て激怒する。
”縄は神聖なんだから”!


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:26:07.19 ID:TE6x0u8e0
私ね、あなたが嫌われてるって聞いて、
ちょっと嬉しかったんだ。
いや、すっごく、だね。
じゃあ、この人は、他に話す人もいなくて、
私のところに来てくれるかもしれない、って思って。

街に行けなくても、森を歩けなくてもいいからさあ。


82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:30:19.24 ID:TE6x0u8e0
「どうなってるか、知りたかったの」
女の子はどうやら、縄の生えた部分の肉ごと、
切り落とそうとしたみたいだった。

「怪我しちゃった」
それで分かったことだが、縄は心臓と繋がっていた。
分かったからどうにかなることでもないんだが。


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:40:54.72 ID:TE6x0u8e0
両親は嘆き悲しんだ。
この子は外の世界を知るべきではなかったんだ。
一時の幸福と引き換えに、一生の不幸を背負ってしまった。


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:44:02.94 ID:TE6x0u8e0
傷口がもとで、女の子は重い病を患う。
そう、男の子が感染していたあの病気だ。
これで両親の嘘は完全に実現したわけだ。
こうなったら男の子の言う通り、もう長くはない。


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:48:14.71 ID:TE6x0u8e0
男の子のもとを訪れた女の子の両親は、
彼の状態があまりに自分の娘と酷似しているのを見て、
驚くと同時に、いろんなことを理解する。

父親は思う、
ああ、俺たちはあまりに馬鹿で考え無しだから、
そのままにしておけば良いことを、
自分たちの手でわざわざ駄目にしてしまう。


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:53:35.94 ID:TE6x0u8e0
女の子の両親は、男の子に全てを打ち明ける。
なあ、今さら、娘に会ってやってくれっていうのは、
虫の良すぎる話なんだろうが、そうしてくれないか?

次の瞬間には、男の子は消えていた。
両親が家に戻ると、女の子も姿を消していた。
女の子と繋がる縄は、家の外に続いていた。
辿って行くと、縄は途中で千切れていた。


ひっぱって、ひっぱって。


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/21(水) 00:56:48.35 ID:TE6x0u8e0
おしまーーーーい。
最後まで読んでくれた暇人いたらありがとう
ここでCM入るぜ
http://fafoo.web.fc2.com/other.htm


コメント

このブログの人気の投稿

【三日間の幸福】寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。

土着信仰や風習に関する怖い話貼ってけ。

5億年ボタンを読んでから気持ち悪くなってきた